イケメンエリート、最後の独身


「色んな人に似てるってよく言われるよ。
 でも、最終的にはやっぱり似てなかったってなる。
 謙人さんの方が何倍もカッコいいってね」

 謙人が言えば全然嫌味に聞こえない。だって、そうだと思うから。謙人を知れば知るだけ、不思議な魅力に取り憑かれる。

…だけど、謙人さんって何でこんなに楽しそうなんだろう?

 萌絵はついつい謙人の後ろを歩いてしまう。でも、謙人はすぐに萌絵の手を取り隣に引き寄せる。

「萌絵ちゃんの姿が見えないと心配になるから、隣にいて…」

「…はい」

 萌絵は本当に有難かった。田舎者は田舎者らしく何も知らない事を隠しちゃいけない。

…謙人さんは、きっと、田舎者の私がすぐに道に迷う事を知っている。だから、こんなに心配してくれるんだ。

 萌絵は今日のいい事を何度も思い出した。
 明智さんの笑顔、謙人さんの優しさ…
 だけど、そのいい事もホヨンの冷たい表情を消すほどの威力はない。

「萌絵ちゃん、仕事はどう?
 難しいだろ? 覚える事も多いし」

 電車の中は混んでいたけれど、二席だけ空いていた。二人は並んでそこに座った。
 萌絵は謙人の質問にどう答えていいか分からない。もちろん、覚える事が多くて大変だし、でも、それ以前の問題のような気がする。


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