イケメンエリート、最後の独身
ホヨンはそう言うと、カフェスペースへ向かった。萌絵は、そんなホヨンの後を付いて行く。
「ホヨンさん、それと…
今日はありがとうございました… それだけはちゃんと伝えたくて…」
ホヨンはコーヒーを淹れながら、萌絵の方を見る。
「何のこと? もう忘れた」
ホヨンの顔は笑っていた。お昼の事を思い出したみたいで目元が細くなり子供みたいな顔になっている。
そんなホヨンを見て、萌絵も一緒に笑った。
お昼の自分の姿を思い返してみると、やっぱり苦笑いが出てくる。そして、そんな穏やかなホヨンとの時間が、萌絵にとってはすごく嬉しかった。
ホヨンの人間性が垣間見えて、少しずつ仲良くなれる事を期待している。早く怖いホヨンのイメージを払拭したい。
そんな二人をコーヒーのいい香りが包み込み、温かく優しい空気が漂っている。
「萌絵ちゃん、そろそろ帰ろうか」
萌絵が振り返ると、謙人がドアにもたれかかってこちらを見ていた。