イケメンエリート、最後の独身


 謙人は萌絵とホヨンのやり取りをずっと見ていた。
 別に隠れて見ていたわけじゃない。二人が入り口に立っている謙人に気付かなかっただけだ。

 ソフィアがこだわってデザインしたカフェスペースは10畳ほどの広さだけど、木目調で木の温かみを感じられるホッとできる空間だ。
 でも、今、その空間を楽しんでいるのは萌絵とホヨンだけで、謙人は嫉妬の嵐の渦の中にいた。
 ホヨンが萌絵と呼び捨てにしたのが、衝撃的だった。
 そんなに親しい仲になったのか? 
 謙人の頭の中は色々な想いでぐちゃぐちゃになっている。
 そんなパニック状態のまま、謙人は二人のやり取りをジッと見ていた。
 ホヨンの俺様的な態度が気に喰わなかった。萌絵はホヨンより年上のはずで、その年の差に対するリスペクトが全くない。
 凪と同様で、周りに気を遣わないタイプだと聞いてはいたが、萌絵に対してはその性格は通用しない。謙人が監視している限りは。

 それに、萌絵さんじゃなくて、萌絵って?
 いつもは冷たい態度で萌絵を困らせているのに、萌絵って…?

 謙人は今時の若い子の感覚が分からなかった。


< 60 / 227 >

この作品をシェア

pagetop