イケメンエリート、最後の独身


 ホヨンは謙人より10歳も年下で、謙人が若い頃の感性とは全く違う。
 以前の謙人ならこういう事は全く気にならなかったし、逆に謙人がこういう人間だった。
 恋をするって、本当に面倒くさい。だって、真逆の人間になってしまったのだから。

 謙人は必死に冷静を装って萌絵に声をかけてみた。
 萌絵の様子は、ホヨンに恋心があるようには見えない。今の時間を一生懸命に生きている。今は…だけど。
 どうした事か、謙人は全てにおいて何もかもに自信がなかった。萌絵の事が気になり過ぎて余裕が全くない。

「謙人さん、お待たせしました」

 萌絵はホヨンとの挨拶を終えて、謙人の隣にやって来た。その顔には安心感が漂っている。
 謙人は無意識に萌絵の手を取り、エレベーターへと急いだ。ホヨンの近くに一秒も居たくない。それは自分の事じゃなく、ホヨンから萌絵を少しでも遠くへ避難させたかった。

「あれ? 萌絵ちゃん、マフラーは?」


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