イケメンエリート、最後の独身


 その時、謙人は舞衣の歓迎会の事をふと思い出した。このビルの54階にある隠れ家的なバーラウンジ。今日の歓迎会も同じ店だ。
 あの時の舞衣はそのバーに見合う洋服を持ち合わせていなかった。そんな舞衣に映司がワンピースをプレゼントした。
 あの衣裳を着た舞衣は、本当に可愛かった。映司の見立てたワンピースは、舞衣の新たな一面を開花させた。

「萌絵ちゃん、今いい?」

 萌絵は大きな窓がある明るいスペースで、慣れないパソコンの仕事をしていた。萌絵専用のノートパソコンと必死に戦っている。

「あ、はい、いいですよ」

 萌絵は謙人の顔を見て、ほっこりと微笑んだ。

「謙人さんの声を聞いて、ホッとしてます。
しばらく会えてなかったので…」

 萌絵の表情から、本当に安心しているのが分かった。謙人は自分が信頼されている事が嬉しくてたまらない。

「萌絵ちゃん、今から気分転換に外へ出ない?」

「外ですか?」

 萌絵は驚いて目を丸くしている。


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