イケメンエリート、最後の独身


「ほら、時間がないから、さっさと選ぼう」

 謙人はそう言いながら、前もってセレクトしてもらっていたワンピースを萌絵の前に並べた。
 萌絵はまだ躊躇していた。ずっと首を横に振っている。

「萌絵ちゃん、心配しないでいいから好きなものを選んでほしい。
 これがEOCのスタイルなんだ。
 この会社を選んでくれてありがとうっていうほんの気持ちだよ」

「でも、金額が高過ぎて…
 私、こんな値段のついた服を買った事がなくて」

 謙人はそんな萌絵の肩にそっと手を置いた。そして、優しく囁きかける。

「EOCの人間にとって、この金額はおやつを買うくらいの感覚だよ。
 それくらい、皆、稼いでるって事。
 それに、前、働いてた舞衣ちゃんっていう女の子も、萌絵ちゃんと同じような事を言ってた。
 皆、いい子なんだね」

 謙人は、わざとらしく腕時計を見て慌てるふりをする。そして、そんな謙人を見て、萌絵はやっとワンピースに目を向ける。

「これとかお似合いになると思いますよ」


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