イケメンエリート、最後の独身


 謙人の知り合いの女性店員が、そう萌絵に声をかける。
 その後の謙人は、萌絵を見守るしかなかった。
 謙人好みのコーディネートを押し付けるわけにはいかない。謙人自身、洋服や小物に関しては強いこだわりを持っている。だから、尚更、口を出せば止まらなくなってしまう。
 謙人は二人から少し離れた場所で、様子を見ていた。
 萌絵は淡いグレ―色のワンピースを手に取っている。謙人もそのワンピースが萌絵に似合うと思っていたから、それだけで気分がよかった。

「謙人さん、ありがとうございました。
 本当に頂いていいんですか?
 お給料が入ってからお支払いしてもいいんですが…」

「お給料が入ったら、一番先にスマホを買わなきゃだろ?
 だから、これは俺からのプレゼント。
 今日の歓迎会は、これを着て一緒に行こう。
 俺がちゃんとエスコートするから」

 萌絵は安心したせいか小さくため息をついた。


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