イケメンエリート、最後の独身


 謙人のメロメロになった頭の中から零れ落ちてくるのは、萌絵を褒め称えるための言葉だけ。
 でも、謙人はある事に気が付いた。それを解決するにはすぐに行動に移さないと時間がない。

「萌絵ちゃん、歓迎会の時間までまだ間があるから、俺にちょっと付き合ってくれないかな?」

 謙人はそう言うと、萌絵の手を取って歩き出す。そして、ビルの外へ出るとすぐにタクシーを拾った。
 タクシーの運転手にスマホで目的地の位置を伝え、すぐにスマホをポケットにしまった。そして、改めて萌絵の姿を見つめる。

「萌絵ちゃん… 本当に綺麗だ… すごく似合ってる」

 謙人の瞳はずっとハートのままだ。元の形に戻す術を忘れてしまったかもしれない。

「謙人さんは、きっと、ギャップに驚いてるんだと思います。
普段、私はこんなワンピースなんて着る事はないし、だから、謙人さんの目に新鮮に映ってるんだと思います」

 タクシーの後部座席は完全にピンク色の世界だった。萌絵と出会ってからこの現象が止む事はない。謙人は隣ではにかむ萌絵の事を本当に愛おしいと思っている。


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