イケメンエリート、最後の独身
「そのワンピースに似合うジュエリーを買いにきた。
さっき萌絵ちゃんを見た時、何かが足りないって思ったんだ」
謙人はガラスケースの中から特に高級品のネックレスをいくつか選び、それを出してもらう。
「これとかはどう?」
萌絵は目を丸くするだけで、何も言わない。必死に首を横にふるだけだ。
萌絵のその反応は、謙人としては想定内だった。
萌絵のような贅沢を知らない子にとって、謙人のこういう行為はただただ驚きでしかない。今までの謙人を取り巻く女の子達はこの手の贈り物が好物だった。その頃は謙人が好んでそういう子達と付き合っていたのだけれど。
「萌絵ちゃん、安心して。
このジュエリーは借りるだけだから。だから、好きなのを選んでいいよ」
「借りるだけですか?」
萌絵のホッとした表情に不思議と癒される。
「そう、だから、気に入ったものを選べばいい」
謙人はそう言って、スタッフの人を奥に引き寄せた。そして、今の事情を説明する。謙人がその手の贈り物を借りる事はない。萌絵が選んだ時点で、そのジュエリーは萌絵の物だから。