太陽と月の恋
「ちゃんと続けてます?」
「はい、やってます」
「しんどくないすか」
「最近、筋肉痛にならなくなってきました」
「じゃあ、ちょっとメニュー量増やしますか。それとストレッチもやらないとですね」

彼の目が、目の前の鏡の中に向けられて、その中で私たちは目が合う。

「平日19時半からなら俺大体ここいるんで、早ければ明日とか」

「明日」の響きがサラリとしていた。
彼は特別何も気にしてないようだ。

でも私は月水金。
明日は木曜。

まあいっか、3日連続になっても。

加速したランニングマシンが私に走れ走れと鞭打ち続ける。
ゴウゴウとした機械的な響きの中で、私は静かに「じゃあ、明日で」と答えた。

河辺さんは口元に笑みを浮かべる。

「明日の19時半からカウンセリングでお取りしておくんで、この間みたいにあのテーブル前にいてもらっていいですか」

彼は顔を測定器がある方向へと向けたので、私も走りながらチラリと視線を向けた。

今も別のトレーナーさんに指導されてる男性が付近にいる。

明日。
きっと彼にとっては何てことない仕事の一環だろう。
気にする方がおかしい。

河辺さんは軽く会釈した後、アルコールスプレーを空いてる器具に吹きかけながら私の場所を離れていった。
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