太陽と月の恋
ランニングマシンで時速7キロのスピードで走っていた頃、入り口のドアが開いて真っ白いTシャツの彼が入ってきた。

彼はふとドアの外を振り返って、今レッスンが終わったばかりの子ども達に笑って手を振り返す。

そしてまっすぐ私のところまで歩いてきた。

19時20分。
言っていた通りの時刻だ。

「お疲れ様です」

カラッとした声に、私は顔を向ける。

「お疲れ様です」
「今日、ちゃんとやりました?」
「やりましたよ、今だってこうして・・」

そう会話してる間に、彼の手がまた操作パネルに伸び、勝手に速度を時速10キロに変えた。
一気に足元の動きが速くなって強制的に走らされる私を、「フォームが素人」と彼は笑う。

「止めて、止めて」

私は自分で電源をオフにし、足元がゆっくり止まるのを待つ間も、彼はツボに入ったようで笑ってしゃがみ込んでいた。

「マジで運動してないっすね」

やっと立ち上がった彼はそんなことを言う。

私が目を見開いたまま返しに悩んでいると、彼は笑うのを止め「ちょっと早いけどカウンセリング始めていいすか」とテーブルの方を指差した。

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