太陽と月の恋
体験日以来、また測定器に立たされる。

体重51.8kg。

その数字を眺めた後、傍に立つ彼と目が合う。

「どうですか」と聞いてきた。

「ちょっと痩せたかなって」
「ですね、日々動きはあるとして、この1週間頑張ってこの結果で、どうですか、続けられそうですか」

河辺さんはプリンターから印字された結果を持ってきてテーブルに置く。

「今、この数値見てるじゃないですか。今後、この数値が改善することももちろん大切だと思うんですけど、多少無視して、無視って言い方が合ってるかは分からないんですけど、一旦置いといて、体のラインとかここをこうしたい、ウエスト絞りたいとかヒップアップとか、そういう希望ってあります?」
「んー、なんだろ、脚痩せしたいです」
「脚痩せか・・・」

彼はそう言って黙り込む。

え、今私に希望聞いてきたじゃん。

少し用紙と睨めっこした彼は、顎に手を置いたままゆっくりと私の顔を覗き込む。

「俺の理想でメニュー組み直していいですか」
「え、今私脚痩せって」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ちょっと・・・あの・・・黙っててもらっていいですか」

彼の率直な言葉に思わず噴き出す。

「聞いてきといて失礼でしょ」
「ええ、ええ、ごめんなさい、ちょっと黙っててください」

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