太陽と月の恋
店を出ると私はまたストールに顔を埋める。
同時に隣で「さむっ」と河辺さんが肩をすくめた。

そして目の前に左手の手のひらを差し出してきた。

数秒、もしくは1秒以下だったかもしれない。

私はその手のひらを眺め、意味を考えた。

目を見上げた時、彼はさらに「はい」とでも言うように手を私にグイッと近づけてきた。

じゃあ、とそこに私の右手を重ねる。

手を繋ぐと、彼は照れ隠しかのように「寒いからねー」と声を空に向けて張った。白い息も同時に天へと立ち昇る。

その手はしっかりとした骨格を感じられて、私のことを離しそうになくて、少し信じられるような気がした。

「家どっち」
「市役所と同じ通り」
「あっちか」

私たちはそれとなくお互いペースを合わせて歩く。

途中、淡いブルーの電飾に彩られたクリスマスツリーを目にした。
私がそっちに視線を向けると、歩くスピードが落ちるから彼も隣で見るのが分かる。

その視線はいつのまにかクリスマスツリーから私に向けられていて、私がそれに気付くと彼はフッと笑った。

「好き?ああいうの」
「好きっていうか、見ておかないと勿体なく感じる」
「ああー、今だけだからね」
「うん」
「もうちょっと前に決まっていたら、ちゃんと準備してそういうスポット調べたんだけどな」
「別にいいよ」

私はそう答えたけど、彼はストレートにすべて想いをぶつけてきてくれることが嬉しかった。

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