太陽と月の恋
「好きだよ」

剛くんが言う。

「うん」
「うんじゃなくて、好きだよって言ってよ」
「すきだよ」

私は恥ずかしくて笑った。

「なんで笑うの」
「恥ずかしいもん、言わないじゃん、普通」
「言うよ、俺、全然言う」

セックスの最中も剛くんはたまに動きを止めて話しかけてくる。

「大丈夫?痛くない?」
「大丈夫」
「気持ちいい?」
「うん」
「どうして欲しい?」
「これでいい、このままでいい」

納得いかないような顔をしながら、私の髪を撫でて耳たぶを舐めてくる。

「気持ちいい?」
「さっきもそれ言った」
「だって反応ないんだもん、反応してよ」

剛くんは指を私の口に入れてくるから舐めると、剛くんも指を動かして私の舌を撫でてくる。

「俺はめっちゃ気持ちいいんだけど、今」
「私も気持ちいいよ」
「本当に?」
「そんなに気にしないでよ」
「だって好きな子とエッチしてんのに独りよがりは嫌じゃん」

ふとこんな時に限って拓郎との淡白なセックスを思い出してしまった。黙々とした作業のような時間。終わった後の放置プレー。
その前の人はそれこそ独りよがりだったし、その前は下手くそだったし。

私はちゃんとセックスをしたことがなかったのかもしれない。

「あ」と僅かに漏れた声を剛くんは聞き逃さなかったらしく、少し口元に笑みを浮かべた。

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