太陽と月の恋
「剛くん」

私は剛くんの話を遮るような形で声掛けた。

「剛くんはなんで私のことそんなに好きなの」
「えっ」
「だって私たち、お互い何にも知らないでしょ。何も知らないことが多過ぎて、それなのにどこを見て好きになったの」

剛くんは黙り込む。

私たちはあっという間に簡単に付き合ってしまったけど、これといったキッカケとかはなく、でもただなんとなく恋に落ちてしまったようなものだった。

「どこっていうか、顔、かな」

電話の向こうで剛くんが言う。

「顔?」
「うん、顔とかなんか、なんていうか雰囲気とかじゃない?」
「もっと私たちちゃんとお互いのこと知り合ってから付き合うべきだったよ。剛くんは私のこと何も知らないよ」
「これから知っていけばいいって俺は思ってたんだけど」
「でも私は今日知ったことはショック大きかった。剛くん、子どもいるの?」
「いないよ」
「なんで離婚したの?」
「なんでって、俺の転職が上手くいかなくて」
「いつ結婚したの?」
「んー、大体3年前かな」
「いつ離婚したの?」
「一昨年の夏」
「私ね、まだ剛くんのこと信用しきれない。まだ剛くんのこと何も知らない」

そこまで私が言い切ると、剛くんは電話の向こうで黙った。

ちょっと言い過ぎたかな。
時計を見ると18時を過ぎていた。ため息が漏れる。

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