君の答えを、教えて。
いつの間にか、お昼時間は突然できた彼氏と相変わらずの優月と三人で食べることになっていた。

お互いのクラスの話をして、時には家庭の話をする。

というのも喋っているのはわたし以外の翔湊と優月で、わたしは静かに聞くだけの身であった。

そして話が流れてズレていく。

「最近ひいおじいちゃんが死んじゃったんだよね」

と優月が言うと、

「いやいや、めっちゃ長生きしてんじゃん」

と翔湊が返す。

「でもやっぱり死んじゃうと悲しいじゃん」

「そりゃあまあ、そうだな。俺はひいじいちゃんとの記憶なんてねぇからあんま思い入れねぇけどさ」

思い入れ、だとさ。

二人はわたしが死んだことで、思い入れとか出てくるのかな。

……っ、どうして思い入れが欲しくなってるの。

わたしは、むしろ思い入れなんていらないのに。

「#./_は、本当に死んじゃうの?」

突然優月がわたしに話を向けてきた。

そうだね、死んじゃうよ、とそう言えるわけもなくなんて返すか困っていると優月は涙目になっていった。

いつわたしはあなたたちと、死んだら泣かれるような関係を作ったんだろう。

何もできなくてニコッと笑っただけだった。

わたしは死なないよ、とも言えないし、わたしは死ぬよ、と言ったら泣かれるだけ。

じゃあどう答えればいいの?

嘘も本当もダメだったら、他に何があるわけ?

「ごちそうさま」

翔湊が手を合わせてから立ち上がった。

「優月、#./_借りてくね」

「え? あ、うん」

すると手が取られて翔湊は私を引っ張った。

優月を置いて。

「何、してるの。優月がひとりじゃん」

わたしはいつから友達思いになった?

そもそも、わたしに友達なんていなかったのに。

いつそんな存在を築き上げた?

「#./_は俺の彼女だから、別にいいだろ」

わたしはいつ、彼女っていう役に入った?

ただひたすら進むだけ。

何ひとつとして喋らない。

人が少なくて怖い。

足音だけが響いて、恐怖心を引き立てる。

いつから人が少なくて怖いなんて考えるようになったんだろう。

こんなもんで怖がってたら、わたしは死ねないじゃないか。

そしてたどり着いたのは図書室だった。

翔湊が閉まるドアを押して開けていく。

中には誰もいなかった。

足が鉛のように重い。

入るのが嫌で、怖くて、動かなくなってしまいそうになる。

鎖で足が繋がれたように、重い重い何かが足にくっついているように。

ぎゅっと目をつむってから足を踏み入れる。

頑張って足を前に向けて、手を引っ張る翔湊を頑張って追う。

図書室の端まで来てやっと、翔湊は振り向いた。

と思うと肩を抱かれてわたしは本棚に押し付けられている。

「ちょ、翔湊?」

こいつ、何やってんの?

離してよ……っ。

「#./_さ、ホントに死ぬ気?」

嫌で嫌でたまらなくて、頭が勝手に動いた。

大きくはっきりと、頷いてしまった。

「死んじゃダメだよ」

翔湊はそう言ったあと、顔をぐっと近づけてきた。

心臓が嫌な音を立てる。

今にも壊れて爆発しちゃいそうな不安定な音。

「ちょっと、ごめんね」

いつもよりも優しい翔湊は口を近づけてきて、そのまま反抗もできずに受け入れる形になった。

「かな……た」

「うん」

上手い具合に喋る翔湊と、初めての体験にあわあわと焦りながらも何もできないわたし。

舌が入ってきて、もう時間もそれなりで息が荒くなる。

スカートの中に入れていたシャツが引っ張り出されて、そこから手が侵入してくる。

下着の下で、翔湊の手がわたしの背中をさすった。

「んっ……」

キスしている時間が、ものすごく長く感じられた。

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