跡取りドクターの長い恋煩い
 でも、幼馴染か……。
 幼馴染って、一人ってわけじゃないのよね。私だけじゃない、そんな当たり前のことがどうしても引っかかっていてた。

 じゃあ聞けばいい。
直接宗司くんに聞いてしまえば解決するはずなのに、なぜかそれができないでいる。
知るのが怖いのだ。

 「宗司くんを信じていないわけじゃないんだけどな……」

 そう。問題は宗司くんじゃなくて、私にある。
 
 瑞穂さん……。
 とても綺麗な人だった。
 宗司くんの幼馴染で、私が知らない宗司くんの17年間を知っている人。

 私はあの人に敵わない気がする。

 あの人に勝てる自信がないのだ。
料理だって、私は食べさせてもらっているだけ。
 彼女のように教えてもらうなんて、考えたこともなかった。
 
 「綺麗な上に料理もするのか。
 あ、管理栄養士さんなんだから当然なのかな……」

 ここのところ1人になると、ずっと考え込んでしまっていた。


 ◇◇
 

 「笑美里、最近元気なくない?」

 「え、そうかな……」

 「うん。宗司先生と何かあった?」
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