跡取りドクターの長い恋煩い
 「え! ありがとうございます。
助かります!」

 「いえ、じゃあ……」

 「あ、ちょっと待ってください!
 ……あれ? どこかでお会いしませんでしたか?」

 ……7東のナースステーションでね。確かに目が合いました。
 私が思いっきり聞き耳を立てていたこと、気づいていたのかしら。

 「びょ、病棟で見かけられたのかも……」
 
 「そうだっけ……。芦田先生?」

 ネームフォルダの名前を読み上げられた。

 「はい」

 「研修医の先生ですよね。
私は栄養管理室の川瀬瑞穂(かわせみずほ)と言います。
 これ、ありがとうございます!
 後でお部屋へお礼に伺います」
 
 「い、いえ! 絆創膏一枚のことでお礼なんて!
 実は私もよく指先を怪我したりするんです。
だから常時持ち歩いているだけで」
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