跡取りドクターの長い恋煩い
「女子力高っ! 私もしょっちゅうポスターで切ってるのに、持ち歩くなんて発想がなかったわ」

 「……全然ですよ。女子力なんて言葉、私とは無縁。単にそっかしいだけなんで」

 料理もできないし、あなたのように美しくもないし。

 改めて見ると、この人本当に綺麗。ワンピースの上に羽織った白衣がスレンダーな体をさらに際立たせて、医療もののドラマに出てくる女優さんみたい。

 しかもたったこれだけのことでお礼だなんて、すごくきちんとした人だわ。

 「あ、じゃあこれ、いかがですか?」

 すっとポケットから出されたのは、はちみつレモン味ののど飴だった。

 「さっき売店で買ったところなんです。
お1つどうぞ!」

 「……ありがとうございます」

 ニコッと笑って差し出された飴は少し温かくて、そこから彼女の優しい人柄が感じられた。
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