跡取りドクターの長い恋煩い
 「お邪魔しまーす。
 お! 笑美里! 久しぶりだなー。
笑美里が大人になってるよ~」

 「え? あの…………昌宗くん?」

 そう。そこに立っていたのは、大人になった廣澤昌宗(ひろさわまさむね)くん、宗司くんの弟だった。

 「昌宗、早く中に入ってよー。
 笑美里ちゃんお邪魔します!
 宗司くん今日はお招きありがとう!
 忙しかったんじゃないの?
 こんなに早く呼んでもらえると思わなかったわ」

 「いや、昌宗の食生活が気になってたからな」

 「わかる! この人相変わらずよー。
宗司くんと別居してからレトルト三昧。
土日は作りに行ってるけど、平日は全然なのよ。せめて栄養の摂れる食堂にでも行けばいいのに」

 「別居って……気持ち悪いこと言うな。
 研修で疲れていて食べに出るのも億劫なんだよ。レトルトのカレーと飯があれば生きていける」

 「お前、相変わらずだな……」

 「せっかく宗司くんが引越しを遅らせてまでレシピを書いたり作り置きしてくれたりしたのにね。
 作り置きのお惣菜を食べ切ったらそれで終わり。自炊は一切せずよ。兄弟でどうしてこうも違うのかしら」

 「あー! もううるさいなぁ。笑美里がびっくりしてるじゃないか」

 「え、いや、その……」
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