跡取りドクターの長い恋煩い
 宗司くんはバーニャカウダとカプレーゼをローテーブルに運んだあと、キッチンに入り浸りになった。

 あ、あのたれはバーニャカウダのためのものだったんだ。

 スナップエンドウを口にしながら、私が混ぜたそのたれを堪能する。美味しい……。
 
 「宗司くん、このバーニャカウダのソース、後でレシピを教えて。すっごく美味しい!」

 「いいぞー」

 いいなー。私はレシピがあったとしても同じものが作れるとは思えないや。

 やっぱり、女として私っていろいろと問題だわ。料理は出来ないし、瑞穂さんのように洗練された美しさからかけ離れているし。

 食事を楽しんでいると、突然昌宗くんが声を潜めて話し出した。

 「ところでさ、笑美里と兄ちゃん付き合いだしたのか?」

 「え」

 「うんうん、私もそこ気になってた。やっぱりあの一途な想いにやられちゃったんだ?」

 「い、一途って……」

 「やっとここまで漕ぎつけたんだもんな。速攻で告ったはずだ」

 「……でも、笑美里ちゃんにしてみれば突然だったんじゃないの?」

 「うん……まあ……。
 あの、私たちのことより二人のなれそめを聞かせて?」
 
 今この状況で宗司くんとのことを話すのはちょっと恥ずかしいし、私自身の気持ちも整理してからにしたい。
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