跡取りドクターの長い恋煩い
 「俺たちは……なれそめなんてないな」

 「へ?」

 なれそめなんてない、と昌宗くんが言った意味はすぐに分かった。

 二人は幼稚園からの幼馴染で、気づいた時にはいつもお互いが傍にいたそうだ。
小中学校も同じで、つねに傍にいるのが当たり前だったと。

 「うちの兄夫婦と同じね」
 
 兄たちも気づけば傍にいたって感じだった。

 私の母校は幼稚園から高校を卒業するまでほとんどメンバーが変わらない。

そして兄たちのようにいつの間にか傍にいてそのまま結婚するのが王道パターンになっている。
 
 「そうだな。幸太郎くんとこと似てるな」
 
 聞けば、兄夫婦もよく廣澤兄弟のマンションに遊びに来たらしい。

 私以外の皆、大学時代からよく会っていたんだ……。
 私だけが知らない学生時代があるのだと思うと、少し寂しく思った。

 「私たちの話なんていいのよ。
それより笑美里たちの話!」

 いや、それを避けたかったんだけどね。

 とあえず、同級生だとわかったので、お互い名前で気楽に呼び合うことにした。

 どうせ私たちの話をするならと、私が知らない宗司くんの14年間の話を聞くことに。

 「宗司くんってずっとあんな感じ?
 お料理上手で、マメで……」

 「ああ、世話焼きは昔から。性格なんだろうけど、ちょっとうちの特殊な事情も影響してるかな」

 特殊な事情?
< 126 / 179 >

この作品をシェア

pagetop