跡取りドクターの長い恋煩い
 完璧……。
 その言葉に俺は動きを止めてしまった。

 さっき笑美里はスパダリみたいと言ってくれたが、俺はただスパダリを目ざして料理の修行をしていただけだ。
実際はこの後の未知の行為に、期待と同じくらい不安を抱いている。

 自分で言うのもなんだが、高学歴・高身長で持っているスペックは悪くないはずだ。
それに廣澤を継ぐ身だ。経済的にも問題なく、ハイレベルな生活を約束できる。笑美里のために料理も学んだ。

 ただ一つ、俺には学べていないことがある。

 「……笑美里、俺は完璧なんかじゃない」

 「え?」

 「料理みたいに、修行積んでないんだ……」
 
 「修行?」

 お、俺何を言ってるんだ⁉ 自ら情けないことを言うなんて! せっかくいい雰囲気になっているというのに!
 
< 145 / 179 >

この作品をシェア

pagetop