跡取りドクターの長い恋煩い
 「母さんたちが来るって聞いてなかったぞ……」

 「宗司、やっとなのよ?
 瞳ちゃんから連絡をもらって飛んできたわよ」

 ん? 瞳ちゃん? 何のこと? 

 「けど、ここで?
 ……はぁ、まあいいけど……」

 「私達も参加させてもらうわ」

 「……早速だが始めようじゃないか。
幸太郎、お前が仕切るか?」

 突然父が兄に話を振った。

 「俺? ……まあそうだな、それがいいか。
 コホン、じゃあ僭越ながら芦田家長男の私、幸太郎が取り仕切らせていただきます」

 兄が言葉を改めて、宣言をした。
 取り仕切るって、一体何が始まるのだろう。

 「えー、妹の笑美里と親友である廣澤宗司のミルキーチュー事件から17年の月日が経ちました」

 「な……何を……」

 「笑美里、落ち着け」

 親兄弟に囲まれて、その話は恥ずかしすぎるんですが――。

 「ミルキーチュー事件以降、笑美里に恋をした宗司は他の女には一切見向きもせず、笑美里だけを想ってきました。
まあ、皆さんご存じのとおりです。
 今から約6年半前のことです。
俺は笑美里の大学受験にあたって、指定校推薦のN県地域枠で受けさせることを考えました。……いずれ廣澤家に嫁がせる予定で」
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