跡取りドクターの長い恋煩い
 「え……」

 それって同期のみんなが言ってたこと?

 「宗司も、廣澤のご両親も、この話を快く受け入れてくださったこと、感謝しています」

 「笑美里ちゃんは小さい頃からとっても可愛くて、こんな娘が私にもいたらよかったのにって思ってたのよ? うちは女の子に恵まれなかったから」

 「ああ、そうだな……。
うちとしては願ってもない話だった。
 何より、宗司は笑美里ちゃんしか見てなかったからな。もし笑美里ちゃんを捕まえることが出来なかったら、こいつは一生独り者なんじゃないかと心配したもんだ」

 「副院長……」

 「廣澤に来てくれて嬉しかったよ」

 ……! あれはそういう意味だったのか。
 
 「廣澤、それはこちらのセリフだ。
正直、廣澤総合病院とうちとじゃ格が違う。
 笑美里は私たちにとっては可愛い娘だが、まだ医者になれるかもわからなかったんだ。
それを、先を見越して受け入れてくれるなんて……」

 「いや、それは違う。笑美里ちゃんなら別に医者にならなくたって全然良かったんだよ」
 
 「は?」

 「そうよ。うちの宗司が笑美里ちゃんじゃないとダメだからです。
それに私たちも笑美里ちゃんだからこそ来てほしかったのよ?」

 「……そうか、廣澤も灯里ちゃんもありがとう……」

 父が心から嬉しそうな顔をしている。
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