跡取りドクターの長い恋煩い
　「あ、幸太郎君、話を妨げて悪かったね」

　「いえいえ、今までの皆さんの想いはここで出していただいた方がいいと思います。
　……では続けます。
えー、この四月から笑美里が廣澤総合病院に入職し、一ヶ月が経ちました。
　ずっと実家から出ることなくぬくぬくと育った笑美里が、音を上げることもなく今過ごしていられるのは宗司のおかげだと思っていいと思います。
　宗司、ありがとうな」

　「俺はやりたいことをしているだけだ」

　宗司くん……。

　「私は、毎日宗司くんが世話を焼いてくれたからホームシックにもならなかったんだと思う。
　すっごく感謝してるんだよ？」

　「笑美里……」

　明かされる事実があの時の同期の話と重なって、本当に廣澤に嫁ぐために仕組まれてきたのだとわかったけれど、それを反対する気にはなれない。むしろ、みんなに見守られていたことに感謝の気持ちがこみ上げる。
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