跡取りドクターの長い恋煩い
 「まあ、頑張れよ。宗司が廣澤を継ぐんだろう?」

 「……いや、まだわからない。従姉が継ぐかもしれないし」

 「でも医学部には行くよな?」

 「うん。それはそのつもり」

 「じゃあ、いずれ大学で会うかもな」

 「大学……うん、頑張るよ。
 ……笑美里は?  笑美里も医者になるの?」

 「あいつはわからないな。
 本人はなりたいって言ってるけど、そそっかしいし、何より成績がなぁ……」

 「幸太郎くんが教えてあげればいいじゃん」

 「教えてる。だから言ってるんだよ。
 まあ、本人の頑張り次第だろうな」

 俺が近くにいたら教えてやれるのにな。
 でも俺たちの実家は県をまたいでいる。
 もっと近くなら良かったのに……。

 「お兄ちゃん?  今、笑美里の悪口言った?」

 「げ。……お前聞いていたのか?」

 幸太郎の顔に『ヤバい』って書いてる。

 「ふーんだ!  どうせ笑美里は頭悪いもん」

 「……はぁ……。お前はそそっかしいんだ。
計算ミスが多すぎる。考え方はあっているのに勿体ないことばかりしている」

 「わかってるもーん! でも気をつけてるんだよ?」
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