跡取りドクターの長い恋煩い
 しかし繰り返すがこうしている場合ではない。

 スパダリたるもの、朝食を作らねば!

 俺は簡単に服を身につけ、笑美里の冷蔵庫を勝手に開けさせてもらった。
 
「牛乳と卵とバター風味のマーガリン……だけ?」

 こいつ、どんな食生活だ?

 笑美里はここに住んでまだ1週間だが、近くにスーパーマーケットはあるし、このマンションには、頼めば食材を買ってきてくれるコンシェルジュもいるのだ。

 ……まあ、これも想定内。笑美里が自炊を得意としないことはリサーチ済だ。

 俺は玄関にあった笑美里の部屋の鍵を持って隣の自室に素早く戻り、手早くシャワーを浴びルームウェアに着替えた。
そして朝食の材料を持って再び笑美里の部屋に戻る。

 笑美里はまだシャワーの最中だった。

 俺は手際よく卵を割り、オムレツ用の卵液を作り始めた。

 あとはグリルしたソーセージをのせるだけ、と言ったところで笑美里が出てきて、先程の展開になったのだった。
 
 悪いがこの機会は逃せない。
 明日になったら本格的に研修が始まる。そうなれば、ゆっくり恋愛を始めるなんてことは無理だろう。
それに、病院には他にも若いドクターが沢山いるわけだ。

 研修が始まる前に俺のものと言える関係になれたことに、俺は舞い上がっていた。

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