跡取りドクターの長い恋煩い
「ま、廣澤では初期研修医は内科からって決まってる。半年はここで頑張ってくれ。
 循環器、呼吸器、消化器……その都度指導医が変わる。とにかく、わからないことはすぐ聞く。それはどのグループでも、どの科でも鉄則だから。わかったね?」

「はい!  よろしくお願いします!」

 こうして、初期研修医プログラムは内科から始まった。



 午前中は矢本先生の外来でサイドにつき、ひたすら電子カルテと向き合う。
 入職して1週間の総合研修で使い方は身につけているのだが、薬がすぐには出てこないのよね。

「芦田先生、初日からサクサク進むわけじゃないから気にしないで。1週間もすれば、ここで使ってるジェネリックも大体覚えるだろう」

 矢本先生は優しい。この人が指導医で良かった。

「すみません。
 次の外来までに、チェックしておきます」

「真面目だね」

 私から真面目を取ったら何も残らない。元々出来がいいわけでも要領がいいわけでもないんだから。

 外来は患者さんが絶えず、やっと食堂へ行く事ができたのが13:40。これでも早い方だそうだ。
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