跡取りドクターの長い恋煩い
「どこの大学から来たとしても、地域枠での受験の場合、N県ならここ廣澤総合病院での研修になるって知ってた?」

「え?  そうなの?」

「八木の言いたいことわかったわー。
 なるほどな。親同士が同期なら、最初から娘を託すつもりだったってことだな」

「え?  え?」

 どういうこと?
 この人達の頭の回転の速さについていけない。

「えーっとつまりね、彼らが言ってるのは、笑美里は大学受験の時から廣澤に9年勤務することを、御家族はわかった上で受けさせたって事ね。多分だけど」

「……」

「うん。だからね、笑美里は俊輔みたいに実家がN県だからN県地域枠で受けたわけじゃないでしょ?
 だって笑美里の大学、地元の大阪枠もあるじゃない」

 確かに実際には大阪地域枠というものも存在して、私はそっちにしようかと思ったのに、家族……いや確か兄に言われたのだ。N県にしろ、と。
 今考えてみたら、過保護な兄がN県を推したのは……おかしい?

「芦田ってひょっとしてお兄さんがいる?
 実家はお兄さんが継ぐとか?」

「え?  あ、うん。そうだけど……」

 どうしてわかったの?

「芦田が幼馴染って言うなら、そのお兄さんも廣澤Jrと幼馴染なんだよな?」

「うん。というか、親友かな?
  大学の同期なの」

「「「はぁ⁉」」」

 え、何かおかしなこと言ったかな。
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