跡取りドクターの長い恋煩い
「わかったか?
 君の彼女を想う熱い気持ちはわかるが、くれぐれも初期研修が受けられなくなるような事態にはならないように気をつけろ。
 ……ひ、避妊とかな」

「……! 」

「ま、今日が初日で、午前中俺のサイドについてくれていただけだが、彼女はいい子だ。真面目に研修に取り組んでいるし、素直で明るくて性格もいい。
 ……君の人を見る目は確かだと思うよ」

「ありがとうございます!」

 笑美里が褒められた!
 俺にとっては何よりも嬉しいことだ。

「……しかしこの跡取り、相当な天然だな……」

「え?  何かおっしゃいましたか?」

 何故か矢本先生が苦笑いしている。

「……いや、何でもないよ。コーヒーを買ってくる。君もどうだ?」

「ありがとうございます! いただきます」





 矢本先生に言われて思い出した。
 そうだ、今後も機会があるかもしれないのに、まだ購入していないじゃないか。
 よし! 後で買っておくか。備えあれば憂いなしだ。
 ……ついでに装着の練習も――。
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