跡取りドクターの長い恋煩い
 こうして私たちは約1ヶ月ごとにローテーションしていく。

 内科といっても学ばなければいけない分野は多岐にわたるので、半年以上の必修が義務付けられているのだ。




 7階のエレベーターホールから7東のナーステーションは見えている。
 今朝、朝イチで師長のところへ挨拶に行き、その時に7東のナースには紹介されていた。

「あ、芦田先生!  お疲れ様です〜」

「お、お疲れ様です!
 あの……カルテを見ておきたいんですが」

「あー、はいはい。そのふたつの電カルなら今空いてますから」

 4台並んだ電子カルテの、右端の2つが空いているようだ。

「先生、使い方分かります?」

「あ、えっと、多分……」

「わからなかったらいつでも聞いてくださいね」

 そう言ってにっこり笑った彼女は、多分私より若い。とっても可愛い看護師さんだ。
 看護学校を出て2年目くらいかな?
 若くてもここでは私よりずっと先輩なのだ。
沢山教えて頂こう。

「矢本先生の患者さんのカルテを見たいんです」

「矢本先生ですね。
 まずご自分のIDとパスワードを入れてください」

 私は言われた通りにパスワードを打ち込む。

「はい。これで使用者は芦田先生になりました。
 で、こちらがID表です。この中からお目当ての先生のIDを入れると、担当患者さんのデータが出てきます。
 矢本先生なら……これですね」

 矢本先生のIDを打ち込むと、なるほど、使用者は私のままで矢本先生の患者さんのデータが出てきた。

「ありがとうございます! 助かりました」

「いえいえ。今特に重篤な人はいないですね。ただ……」

 ただ……?
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