跡取りドクターの長い恋煩い
「笑美里、その敬語やめろ。今まで通りでいい。あと名前も、宗司くんでいいから」

 「そ、そんなわけには……。
 私、要領のいいタイプじゃないから、使い分けって出来ないの。うっかり『宗司くん』って病院で呼んじゃったら大変だもん」

 「別にいいだろ? 幼馴染なのは隠すことじゃない。
 患者さんの前ではちゃんと話すだろうし」

 それは間違いない。患者さんの前ではさすがの私も『くん』呼びはしないだろう。

 「う、ん……わかった」
 それから私たちは朝食を頂くことにした。

 『笑美里』か。久しぶりに呼ばれたな、懐かしい……。私だって昔は『宗司くん』って呼んでいた。

頭の中に、幼い頃の思い出が蘇る。

『そーしくん……そーしくん……』

 え? 今のなに?
 何か私、昨日宗司くんの名前を何度も呼んだような……。
 夢の中でかしら。……夢? 
 そういえば夢に宗司くんが出てきたような気がする。

ふと浮かんだのは、生々しいアレコレ。
 …………。
 いやいや、あり得ないって。
 と、とりあえず食べよう!
 食べて、頭を回転させなくちゃ!
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