跡取りドクターの長い恋煩い
 想像の斜め上を行く答えってこのことだわ。
元カノとかお母様が教えてくれたとか、そんな答えだと思ってた。

「幸太郎とフットサルのサークルも入ってたけどな。けどサークルは月イチしかなかったから」

「それで男子料理部……」

「ああ。趣味と実益を兼ねたクラブ活動だった」

「……宗司くんすごいね。
 楽しそうだなぁ。自分がやりたいことを思いっきり突き詰められるって羨ましい。
 私ね、高校でも大学でも勉強ばかりしてたの。ほら、昔からお兄ちゃんにそそっかしいて言われてたでしょう?  頑張っても全然成績に反映されないのよ。
 何とか医大には入れたけど、ついて行くのに必死だったの」

「笑美里……」

「でもね、私何も出来ないけど、今ここにいられることがとっても嬉しいの。
 だって夢だったんだもん!
 ねぇ……覚えてる?」

 昔、宗司くんが私に言ってくれたこと。

「あれはお葬式だったかな?
 最後に会った日のこと……」

「覚えてるよ」

「あの頃ね、お兄ちゃんにはいつも本気にされていなかったのよ、医者になりたいってこと。
 でも、宗司くんが『頑張れよ!  いつか一緒に仕事が出来たらいいな』って言ってくれたの」

「……ああ、言ったな」
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