跡取りドクターの長い恋煩い
「私ね、すごく嬉しかったの。
 なんだか宗司くんだけは私を認めてくれた気がして。
応援してくれている人がここにいたー! って感じかな」

「……」

「だからね、やっぱり諦めるのはやめようと思ったの。……ありがとうね。宗司くんのおかげ」

 
 ◇◇

 
「だからね、やっぱり諦めるのはやめようと思ったの。……ありがとうね。宗司くんのおかげ」

 そう言って笑美里が恥ずかしそうに笑った。
 
「それは……笑美里が頑張ったからだ。
でも良かった……」

 あの通夜の日、いつかを願って笑美里に言った言葉が、笑美里へのエールになっていたとは知らなかった。

 もちろん本気で言った。俺たちの未来を想像して、本気で願ったからだ。

 だからこそ今笑美里がここにいる。
 そう言われると、過去の俺を褒めてやりたくなる。
 もちろん、笑美里と一緒にいられる未来が続いているからだけでない。笑美里の夢を叶える手伝いが出来たからだ。

 俺が作った何の変哲もない生姜焼きを美味そうに食べている笑美里を見ると、守ってやりたくなる。
 これから先は、笑美里が思い通りの道を進めるよう、俺が横で支えるんだ。……やっとだ。

 あの二人に約束した通り、俺は笑美里を幸せに出来るのだろうか。
 
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