クールな許嫁の甘い独り占め。
「――男……?」
「えっ、あれ?ごめん、言ってなかった…?
リオンちゃん、男の子なの…」
「…………」
料理をしていた手が止まった。
急に蒼永の表情が曇り出して慌てる。
「ごめん!私も最初女の子と勘違いしてて!
リオンちゃん、すごく話しやすいから男の子だって忘れちゃってて…それで…」
「――そう」
「蒼永、怒った…?」
私は恐る恐る蒼永の顔色を伺う。
蒼永は黙って手を動かし、料理の続きを再開する。
「怒ってないよ」
「そ、そっか……」
だけど、なんとなく気まずくて重たい空気が流れる…。
私はそれ以上何も言えなくなってしまい、リオンちゃんからもらったマスカラを握りしめるだけだった。
「――咲玖、ごはんできた……えっ!?泣いてる!?」
「…うっ、ひっく…っ」
「え、ごめん…?」
「ちがっ、ごめんなさ…っ」
蒼永は一旦ごはんをテーブルに置き、急にボロ泣きし出す私の目の前に座る。
「咲玖、ほんとに怒ってないよ?」
「でも、考えなしだった…わたしだって、紫帆ちゃんのことでヤキモチ妬いてたのに…。
いくら女の子みたいな友達でも、男の子だったら嫌だよね…」
「……」
蒼永は優しく引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「…嫌じゃないって言ったら嘘になるけど、咲玖にとっては友達なんでしょ?」