クールな許嫁の甘い独り占め。
え――…
「やっぱりそうだ。久しぶりじゃん」
嘘でしょ……?
どうして、
「俺のこと忘れたなんて言わないよなぁ?」
目黒くんがいるの――…?
「…目黒くん…」
「へー、かわいくなったじゃん」
「…っ」
目黒くんは、全然変わってない。
笑ってるのに、すごく怖いの。
「お前さ、中学の時ずっと俺のこと避けてただろ?」
「……」
「なんで避けるんだよ。傷つくだろ」
「…それは…」
目黒くんが、私を傷つけるから――…
「なぁ、聞いてる?」
「…っ!」
やっぱりこわい……っ。
「なぁ、」
「――俺の許嫁に触るな」
――今、心の中で呼んだの。
心配かけちゃダメって思いながら、本当は助けに来て欲しかったの。
「…蒼永…っ」
蒼永はいつも私がピンチの時、絶対に来てくれるよね――…
「はぁ?なんだてめぇ」
「こっちの台詞なんだけど。咲玖のこと傷つけるなら、容赦しない…」
ピリッとした凍てついた空気。
たまに見せる本気で怒った時の蒼永だ。
「まって蒼永…!」
ぎゅっと蒼永の腕にしがみつく。
「かえろう…!」
「咲玖…」
蒼永はギロリと目黒くんを睨みつけ、私の手を引いてその場から立ち去った。
私は蒼永に手を引かれるがまま、振り返ることはなかった。
「…っ、なんなんだよ…」