クールな許嫁の甘い独り占め。
「バーカ」
そう言うと、目黒くんは笑った。
意地悪な笑みじゃない、優しい笑顔だった。
ごめんね、ごめんなさい。
私のことは忘れてください…。
でも、私は忘れない。
目黒くんに好きって言ってもらえたこと、忘れないから――…
* * *
泣いてしまったから、この顔で会場に戻るのは気まずい。
トイレで化粧直しだけして、一人で帰ろうかな…。
桃ちゃんと大志くんにはちゃんと話せたよ、って連絡して後日ちゃんと報告しよう。
あと蒼永にも帰るって連絡しなきゃ…。
「あれ、白凪さん帰るの?」
トイレに行く前にクラスの人たちに見つかってしまった。
「これから二次会カラオケ行こうって話してんだけど」
「白凪さんも来ない?」
「私は…遠慮しようかなっ」
「えー行こうよ〜。てか目赤くない?」
「な、なんでもないのっ。ごめんなさい、今日は帰るね」
「じゃあ連絡先だけ教えてよ」
「えっと…」
ど、どうしよう…どうしたらいいんだ?
「またクラスで集まりたいじゃん。グループ作るからさ」
そういうことなら…いいかな?
私がスマホを出そうとすると。
「――咲玖」