クールな許嫁の甘い独り占め。



何が恥ずかしいって、ドレスとそれを着ている私自身が不釣り合いすぎること。

流石に似合わないから髪は下ろしたけど、すっぴんにこの格好はすごく恥ずかしい…。
せめてリップだけ引くとかすればよかった…。


「もっとよく見せて」

「…っ」


なのに蒼永は、隠していた手を取って覗き込んでくる。



「かわいすぎる…」
「嘘でしょ!?今すっぴんだよ…!」
「咲玖はそのままでも充分かわいいよ」
「う…っ」


でも、執事姿の蒼永とじゃ月とスッポンすぎるよ…。


「誰にも見せたくない。ものすごくかわいい」


なんか蒼永の甘々スイッチが入った気がする…!!
私もこの格好で出歩くのは恥ずかしいので、着替えますが…!!

えっ、てゆーかなんで!?
桃ちゃんってばどういうつもりなの!?

困惑している私に、蒼永が小さめの紙袋を差し出す。


「咲玖、誕生日おめでとう」

「……へっ、」

「やっぱり、今日が誕生日のこと忘れてたでしょ?」



――忘れてたっ!!


「私今日誕生日だ!?」
「忘れてるだろうと思って、春日井たち口止めしといて良かった」


そういえばそうじゃんっ!!
文化祭準備が忙しすぎてすっかり忘れてたわ!!

えっ、てことはつまり…、


「これは桃ちゃんからの誕プレってこと?」
「それは知らないけど…咲玖に黙って時間作ってって言ったのは俺だよ」


マジですか…。


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