クールな許嫁の甘い独り占め。
部屋の前で悶々としていたら、露天風呂から戻ったであろう蒼永に声をかけられた…。
蒼永一人だけで大志くんはいない…。
「…とりあえず、中入る?」
「は、はい…」
意を決して入った部屋は、私たちの部屋とそう変わらない造りだった。
広々としていてとても綺麗で…、ベッドが二つ並んでいて…
わーーーーーどうしよう……っ!!
「咲玖。」
「――ひゃいっ!?」
「お茶淹れたよ」
「あっ、ありがとう…っ」
湯呑を受け取ろうとして、手を滑らせてしまった私はちゃぶ台にお茶をこぼしてしまう。
「あ、ごめんなさい…っ!」
「大丈夫?」
「ふ、ふくもの取ってくる…!」
だけど今度は立ち上がった時に浴衣の裾を踏んでしまい、つんのめって転びそうになった。
「きゃ…っ」
「咲玖!!」
咄嗟に蒼永が支えてくれて転ばずには済んだけど――、二人の距離は一気に縮まる。
顔が近い…っ。
思わず目を逸らしたくなったけど、それよりも先にグッと引き寄せられて、キスされた。
「ん…っ」
いつもより唇に灯る熱が甘く熱く感じる――。
だけど、蒼永の手が私の胸元あたりに触れた瞬間、思わずビクッとして、
「や…っ」
咄嗟に押し退けてしまった。