クールな許嫁の甘い独り占め。
*side.Aoto*
「お兄さんたち、良かったら一緒に滑りませんかぁ?」
…これ言われたの、今日で何回目?
「すみません、僕ら彼女いるので」
なのに毎回大志は丁寧に断る。
俺が反応しなくなったからだと思うけど。
「…はぁ」
「蒼永くん、そろそろ何があったのか教えてよ」
スキー滑りながら喋れるくらいに、大志は余裕があって上手い。
「……」
「話したくないなら無理には聞かないよ?」
「…大志はさ」
「うん?」
「春日井と最後までいってんの?」
「え。」
昨日露天風呂入ってる時、やっぱり春日井と泊まらせて欲しいと言われた時点で察してはいるけど。
「あー…まあ、そうだね」
「そう…」
「てかなんで僕の話なの!?もしかして、」
「違う、してない。…でも、怖がらせた」
あれだけ大事にする、咲玖の気持ちが追いつくまで待つって決めたのに――…
いつもよりずっと楽しそうで、ずっと笑顔の咲玖。
転びながらも一生懸命滑る咲玖。
寒空の下で白い息を吐く咲玖。
風呂上がりの浴衣姿の咲玖。
この旅行中の咲玖は、全部が目に毒だ。
全部がかわいくて、気が狂いそうになる。
「正直咲玖と二人きりで何もしない自信がなかったから、大志たちも誘ったのに…」
「あー…、それはごめんね」