クールな許嫁の甘い独り占め。
建物に着く頃にはだいぶ雪が強くなっていた。
吹雪に近くなってきて、リフトも一時的に停止した。
早めに戻って来て良かったかも。
「あ、桃!」
春日井は休憩所でコーヒーを飲んでいる。
「あら、お帰り。だいぶ吹雪いてきたわね」
「咲玖は?」
「えっ、会ってないの!?」
「えっ」
「九竜のとこ行くってだいぶ前に別れたのよ!」
嘘だろ……?
「さっちゃん来てないよ…?」
「そんな!」
急いでスマホを鳴らしたけど、繋がらない。
特にメッセージも入ってない。
雪はかなり強くなり、危険だから外に出ないようにと警報が出ている。
「咲玖…!」
どうしよう、咲玖に何かあったら…!
「私のせいだわ!私が咲玖を一人で行かせたから…」
「…違う、春日井は悪くない。俺が咲玖についていなかったから…」
「二人ともやめてよ!自分を責めないで!」
「でも…」
「もしかしたら、リフトの頂上にいて降りられないのかも。リフトが動いたら戻ってくるよ!
心配だけど…さっちゃんを信じて待とう?」
「そ、そうよね…リフトが動いたら、戻ってくるわよね…?」
春日井の声は震えていた。
そんな彼女を大志が優しく支える。
俺は自分の無力さに腹が立った。
でも、今は闇雲には動けない。信じて待つしかないのか――…