クールな許嫁の甘い独り占め。
そこから何度電話をかけても繋がらない。
LIMEも既読にならない。
ただ電波が悪いだけなのか、考えたくないけど何かあったのか…。
時間が過ぎる度に焦りが募る。
「リフト再開しました!」
その声にハッとする。
しばらくして、上にいた人たちが降りてきた。
人混みの中から咲玖を探すけど、どこにもいない。
「どうして咲玖いないの!?」
「さっちゃーん!!」
春日井も大志も咲玖を呼んで探し回るけど、どうしても見つけられない。
「咲玖…っ」
「やだもう、電話に出てよ…!」
「桃、落ち着いて…」
「だって…っ!!」
せめて、どこにいるのかわかれば――…
「ねぇ君たち、もしかしてピンクっぽいスキーウェア着てた女の子探してる?」
「違う違う、正確にはラベンダーだったよ」
20代くらいの男性と女性の二人組が俺たちに声をかけた。
確かに咲玖はピンク系のスキーウェアを着てた。
「はい…」
「この子を探してるんですっ!!」
春日井は食い気味になって、昨日撮った咲玖の写真を見せる。
「あ、やっぱり。この子なら見たよ」
「本当ですか!?」
「確か第三リフトの近くで転んでるの見つけて、助け起こしたんだけど…」
「その後リフトが止まって、でもその子見かけなかったから大丈夫かな?って心配してたの」
「…第三リフト付近ですか?」
「ああ、中級者コースの方で…」
「ありがとうございますっ!」
いてもたってもいられず、寒波の中に飛び込んだ。
「蒼永くん!!」
「九竜!!」
――咲玖、待ってて。
絶対助けに行くから――…!!