クールな許嫁の甘い独り占め。
はあ…、勘弁して欲しい。
「ちょっと!うるさいわよ!九竜くんの練習の邪魔になるでしょう」
一人の女子が声をあげた。
あれは確か、同じクラスの松川だっけ。
「九竜くんはあなたたちとは違って特別なのよ。騒ぎ立てて失礼だと思わない?」
松川の言葉にギャラリーたちが黙り込む。
その後、女子たちは散り散りになってどこかへ行ってしまった。
静かになったのは有難いけど、これはこれで面倒だな。
俺の予想は的中した。
「九竜くん、ごめんなさいね。普通科の子たちが弁えずに…」
「……」
「私たちS組は才能を認められ、求められてここにいる。平凡な普通科とは…」
ふと目に入った人物に気づき、俺はもう松川の言葉は耳に届いていなかった。
「咲玖!」
廊下を歩く咲玖に駆け寄る。
「何してるの?」
「あ、蒼永。今ねー調理部の見学させてもらってるところだよ」
エプロンつけてる。かわいい。
「魚の捌き方を教わってたの」
「へえ、意外と本格的だね」
「1年生も先輩方もいい人だし、頑張れそう!」
楽しそうな咲玖、かわいい。