クールな許嫁の甘い独り占め。
「良かったね」
「明日は生徒会を見学させてもらうんだ〜。蒼永は今日空手部?」
「そう。もう少しで終わるから待ってて」
「うん、頑張ってね〜」
手をヒラヒラさせる咲玖もかわいい。
あと少し頑張れそう。
練習に戻った俺は、咲玖のことを憎々しげに見つめる松川に全く気づいていなかった。
* * *
思ったより時間かかってしまった。
1年生は武道場の雑巾掛けをしなければならず、時間を食ってしまった。
咲玖待ってるかな。
「あなた、九竜くんの彼女なの?」
玄関に着いたところで自分の名前が聞こえ、思わず立ち止まる。
あそこにいるのは…松川?
「彼女ではないです」
しかも話してる相手、咲玖じゃないか。
出て行こうか迷ったが、とりあえず様子を見ることにした。
「じゃあ、どうして九竜くんにまとわりつくの?」
「? まとわりついてるつもりはないけど、蒼永とは幼馴染なので?」
「幼馴染?そう、でもはっきり言っておくわ。
九竜くんはあなたのこと迷惑してたわよ」
は?そんなこと一言も言ってない。
「九竜くんは特別なの。S組の中でも選ばれた人なのよ。あなたみたいな凡人が、幼馴染だからって気軽に話していい相手じゃないの」
こいつ、勝手に何言ってんの?
出て行こうとしたところで、咲玖がはっきりと言った。
「蒼永はそんなこと言いませんよ」