クールな許嫁の甘い独り占め。
「はい?」
「あの、お手洗いってどこですか…?」
他校のジャージを着ている女の子だった。
対戦相手の学校の子かな?
「あ、私も行きたいと思ってたので良かったら案内しますよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
黒髪のショートヘアで如何にも運動部らしい、活発そうな女の子だ。
「こちらです」
「ありがとうございます」
私も用を済ませ、軽く前髪を直した。
さっきの子はまだ出てきてないみたい。どうしよう、待ってた方がいいのかな。
「あ、あの……」
どうしようかと悩んでいたら、さっきの子の声が聞こえた。
「はい?どうかしました?」
「実はその、アレになってしまって…」
アレ??
「ナプキンを持っていたりしないでしょうか…」
ああ!そういうことか!
私はポーチからナプキンを取り出し、一枚ドアの隙間から渡した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます…!」
何かあった時のために予備は常備しておきなさいとママに言われ、ポーチに必ず入れるようにしてるのが、役に立ったみたいで良かった。
しばらくして出てきた彼女が、満面の笑みでお礼を言った。
「ありがとうございます!!本当に助かりました…!!」
「いえいえ、お役に立てて良かったです」
「本当に恩人です!」
「そんな大袈裟な」
その後何度もお礼を言われ、その子は行ってしまった。
良いことをした後は気持ちがいいなぁ。
なんて嬉しく思っていたら、「もうすぐ始まるわよ!」との桃ちゃんからのLIMEが。
危ない危ない、急がないと。