クールな許嫁の甘い独り占め。
* *
そんなわけで始まった個人戦。
いくつかブロックに分かれ、それぞれトーナメント戦を行う。
蒼永が参戦するのは、一番強いAブロック。周りは3年の猛者ばかりの中、1年生で唯一の参戦だ。
信じてないわけじゃないけど、この中で優勝…結構大変な戦いになりそう…。
「相手のエース選手は都内ベスト4の実力らしいよ」
「つ、強い…」
「その選手と当たるなら決勝ね」
「蒼永なら大丈夫だよ!」
「そうね〜かわいい許嫁が見てる前でカッコ悪いところ見せられないものね?」
桃ちゃんってばすぐからかうんだから…。
ご褒美のことは黙っておこう…。
いくつかブロックがあるので、蒼永の出番はまだまだだ。隅っこでストレッチしてる。
そんな蒼永に向かってキャーキャー騒いでいるファンの(?)女の子たち。
それを見ながらハラハラしてしまう。蒼永、不機嫌になってないといいけど…。
「すみません!試合の邪魔になるので、静かにしていただけますか?」
そこによく通る声が響いた。はっきりとした口調でそう言ったのは、紫帆ちゃんだった。
「試合中ですので…すみませんが、よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる姿に、ギャラリーたちもバツが悪くなったらしく、みんな静かになった。