クールな許嫁の甘い独り占め。
あだ名で呼ばれたことなんかなかったし変わった奴だなと思ったけど、剣道部で話すことが多くなってからいい奴なんだと知った。
転校組かつ寮生ってことで共通点も多かったし、天野と話すのは気楽だった。
俺に話しかけてくる女子は基本的に下心があるっていうか…とにかく面倒な奴が多かったから尚更。
まあ正直、中学時代のいらないことを喋りそうだから、咲玖とは仲良くしなくてもいいんだけど…。
咲玖も天野のこと気に入ってるみたいだし、仕方ない。
* * *
それからしばらく天野を迎えに行って一緒に帰る日が続いた。
最初天野の高校の校門前で待ってたら、「目立つからやめろ」と文句を言われたので近くのカフェで待ち合わせるようにしてる。
今のところ変な奴は見ていない。
注意深く周りを気にしてるけど、男と一緒にいるのが効いているのか嫌な視線を感じることもなかった。
それが1週間続いた。
「なんかほんとごめん…ここまで近くないし、リュウも疲れてるのに」
「別に歩くのもトレーニングになるし」
「リュウって今も剣道と空手部兼部してるんでしょ?ほんとすごいよね…どこにそんな体力あるの?」
「じいちゃんの稽古に比べたら全然マシだから」
「はあ…やっぱり武道の名門の息子は違うんだね」