クールな許嫁の甘い独り占め。
だって、お出かけはおしゃれして行きたいし。
久々に蒼永が帰って来るってことで、みんなやたらと張り切ってちょっとリッチなフレンチを予約してるんだ。
これはおしゃれして行くしかないと思うんだよね!
「そうゆうわけだから、先に帰るね!」
「うん、またねさっちゃん」
「九竜によろしく」
「うん!またねー!」
「ねぇ、大志」
「何?」
「久々に会った許嫁がめちゃくちゃかわいくなっててモテまくってたらどう思う?」
「蒼永くんはどうかわからないけど、ちょっと焦るかもね」
「…そうよね。九竜には同情するわ…許嫁なのに兄妹とか思われてるし」
「まあなるようになるんじゃないかな」
「そうかしら……」
「桃の面倒見良くて心配性なところ、好きだよ」
「……やめてよばか」
* * *
「咲玖〜!準備できた〜!?」
「待ってママ!もうちょっと!」
ベージュのアイシャドウにゴールドのキラキララメを乗せて、まつ毛はしっかりクルンとカールさせて、薄いピンクのグロスを引いたら完成!
我ながらかわいくできたのでは!?
今着ている白いワンピースも下ろしたて。いつもより大人っぽい感じになれた気がする。
「あら咲玖、気合入ってるじゃない。久々に蒼永くんに会えるんだもんね」
「んー、蒼永は何着ても似合うとしか言わないけど」
しかも無表情だからいまいち本当に似合ってると思ってるのか、よくわからない。
「5年ぶりの許嫁だもの。見惚れさせちゃうかもよ」
「そうかな?」
見惚れるかはともかく、まあちょっとくらいは褒めてもらえたら嬉しいかな。
なんたって服もメイクもヘアメも自信あり!それを褒めてもらえたら嬉しいよね!
やっぱりおしゃれって楽しいなぁ。いつもと違った雰囲気になれるだけでテンション上がるもん。
「こんにちは、咲玖ちゃん。まあ、しばらく見ない間にすっかり綺麗になっちゃったのね」
このほんわかした優しそうな美女は蒼永のお母さんの永美里さん。
10年前からほとんど変わってないんじゃないかってくらいかわいくて若々しくて、密かに私の憧れの人。
「えへへ、ありがとうございます」
「蒼永もきっとびっくりするわぁ」
「蒼永は?」
「もうすぐ来るわ。空港から直接来るって言ってたから……あっ」
カツカツという靴音とガラガラとスーツケースを引く音が近づいてくる。
音に気づいた永美里さんが、パッと顔を綻ばせた。
「蒼永!」
――え……