クールな許嫁の甘い独り占め。



何とか宥めながら大体の場所は聞き出せた。
恐らく最初にあの男を見かけた公園の辺りだ。


「はあ…っ、天野!!」

「――助けてぇっ!!」


天野の声だ。とにかく声の先に全力で走った。
そこにいたのは、天野を抱きしめるように迫る男の後ろ姿だった。


「やめろ!!」


俺は素早く男の首根っこを掴み、そのまま突き飛ばした。


「リュウ…!!」
「大丈夫か天野?」
「…っ、うっ…」


少し制服が乱れてる。大丈夫とは言えない状況のようだ。
俺はジロリとストーカーを睨み付けた。


「天野に手を出すな」
「な、何なんだよお前…!」
「何だっていいだろ」
「良くない!天野さんは僕のものだ!!」


本気でそう思ってるのか。気持ち悪いな。


「お前、ずっと天野さんにくっついてた男だろ…!何者なんだよ!天野さんの何なんだ!」
「友達だけど」
「嘘だっ!!天野さんのストーカーめ!!」


ストーカーにストーカー呼ばわりされるとは心外だな。この思い込みの激しさには同情の余地はない。
話が通じるような相手にも見えないし、どうするか…。

いっそ恋人のフリでもした方がいい?
あんまり乗り気にはなれないけど、それでこいつが諦めるなら――、


「あなたこそ、紫帆ちゃんの何なのよ!!」


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